《月刊ケアマネジメント》(環境新聞社)で連載させていただいている〈幸せのためのヒント〉。
9月号では、インタープリター(*)として活動する和田夏実さんに伺った、手話表現のもつ可能性について紹介しています。
*インタープリター
和田さんが、
・表からは見えない世界の魅力や価値を発掘し、伝える“解釈者”でありたい
・一人ひとりがもっている“感覚”を引きだして伝えることで、“それぞれの世界を結ぶ”存在でありたい
という想いを込めて、自身につけた肩書き
記事全文PDF▶︎▶︎▶︎手話から生まれる表現の美しさを伝えるインタープリター
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ろう者の両親のもとに育ち、幼い頃から両親と社会との間を手話でつないできた和田さんは、
「ろうが障害だと意識させられたことは一度もないです。むしろ、手話で会話するのはすごく楽しい!」
と話します。
手話や手話から生まれる表現の魅力は、和田さんが話す様子からとてもよく伝わってきました。
ふんわりと、しなやかに動くその両手のなかに、
本当は存在しないものが浮かび上がっていく感覚。
それがとても新鮮でした。
・
デザインやテクノロジーと手話を掛け合わせた表現活動をしたり、さまざまな身体性をもつ人たちと協働で、それぞれの感覚を模索するプロジェクトを進めたりしている和田さん。
現在は“言葉にする” の手前にある、人の内面に広がる“宇宙”を探るため、脳科学や神経科学の研究に取り組んでいるそうです。
印象に残った和田さんの言葉は、
▶︎ 実は、私たちが“当たり前”だと思っていることの多くは、歴史のなかで“マジョリティ”がつくってきた幻想なのではないかと。“マイノリティ”と呼ばれる人たちの感覚に、まだ見えていない世界が潜んでいると考えていて。そこを一つずつ探索してみたいんです。
▶︎ 誰もが内面に、ファンタジーの世界のようなイメージの広がりをもっているのではないかと。手話という“メディア” (伝達手段)をもつと、そのイメージを “取り出す”ことができると思うんです。
▶︎ 頭のなかにあることを “取り出せない”ために、そこにあるものが“なかったこと”になってしまうのは、とてももったいない。
▶︎ バリアフリーをめぐるテクノロジーは、「できないことをできるようにするためにサポートする」といったように、“マイナスを起点として”生みだされたものが多いように思います。“足りない”を補うアプローチだけでなく、それぞれの人がもっているものや今ある状態をさらに深めることで、表現の可能性を広げていきたいですね。
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言葉として外に出されていないことに目を向ける大切さを教えてくださった和田さんと、和田さんの家(“死角のない家”)の写真を提供してくださった、写真家の黒羽政士さんに感謝。
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