『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)で連載している〈4つの視点から考える 幸せのためのヒント〉。
6月号では、生まれ育った東京・府中の街に暮らす人たちの営みや日常を記録するイラストレーター、かぶらぎ みなこ さんに伺った話を紹介しています。
素通りしてしまうような何気ない場面に足を止め、人々の会話に耳を澄ます。
日常の風景を解像度を上げて見ているかぶらぎさんが日々、どんなことを感じているのか知りたいと思っていました。
手のひらに収まるデジカメとスケッチブックを、サッと取り出せるようにして街を散策するかぶらぎさん。
“今この瞬間に出会った貴重な光景や人々のことを描き留めておきたい、伝えたい”
という気持ちが、制作の原動力となっているようです。
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大学を卒業後イラストレーターになり、都心で働いていたかぶらぎさんは、2010年の春、お父さまが脳梗塞で倒れて介護が必要になったことから、地元・府中で過ごすように。
そこから6年半、仕事と介護を両立しながらハードな日々を送りました。
重たい介護で気持ちが沈むかぶらぎさんを救ってくれたのは、感情をぶつけるように没頭した府中の絵地図制作。
自分の足で街を隈なく歩き、描いたラフスケッチは約400枚!
3年かけて完成させたその絵地図「武蔵府中絵巻」は、縦1.6m×横3mの大作です。
「現実逃避もあったのかな。『ちょっと、気分転換に』っていう思いが強くて。たぶん、平和なときに、穏やかな感情では制作できなかったと思います。介護をしていたときだったから、できたのかもしれません」
と、かぶらぎさんは振り返ります。
「武蔵府中絵巻」の制作は、著書『府中まちあるきイラストガイド』(遊泳舎/2021)へとつながりました。
さらに、緊急事態宣言が出され世の中の空気が張り詰めていたなか、「明るくて楽しい光景を見つけて届けたい」という想いで始めたシリーズ《コロナの世界の明るい人々》は今も続き、その数は約270点に(2023年5月末時点)。
切り取られた数々の場面は、何気ない日常の風景のなかに、たくさんのほほえましい物語があることを教えてくれます。
人々の暮らしを見つめ、記録することの意義を教えてくださった、かぶらぎさんに感謝。
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