『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)で連載している「4つの視点から考える 幸せのためのヒント」。
11月号では、災害ボランティア歴27年の佐多直厚さんに伺った話を紹介しています。
「貢献する」ことで逆に「受け取ってきた」こと、支援活動を通じた被災地の人たちとのコミュニケーション、「ボランティア人材」と「支援物資の物流」という課題のDX化について。
ACジャパンの情報保障アドバイザーを務め、字幕や手話がついたCMの制作にも取り組んでいる佐多さん。
はじめてお会いしたのは5年ほど前、その取材をさせていただいたときでした。
大手広告代理店で広告デザイナーとしてキャリアをスタートし、アートディレクターを経てプロデューサーに転向。
デザイナー時代に、
「目が見えない人にはビジュアルでデザインしても見えない、耳が聞こえない人には目で見て理解してもらえる情報が全部ないと伝わらない」
という壁に直面したことがその後、ユニバーサルデザインやコミュニケーションデザインへの取り組みにつながっていきました。
そんな佐多さんにとって災害ボランティア活動は、
「海外旅行とか壮大なエンターテイメントショーとか、そんなの足元にも及ばないくらい、感動と喜びを得られるもの」
なのだそう。
「災害でもなければ足を踏み入れることはなかっただろう土地に行って、そこには見たことがない凄まじい光景が広がっているんですけど、予期せぬ様々なトラブルに対処しながら、経験したことのない活動ができるんですから。
こんなことでもなければ、漁船に乗せてもらえないし、牡蠣の養殖場で、牡蠣棚から牡蠣を外す作業もさせてもらえないですよね。もし、いきなり漁師さんに『船に乗せてください』って言ったら、怪しい人だと警戒されますから。
でも災害ボランティアとしてかかわると、喜んで漁船に乗せてくれて、いろいろと教えてくれます、しかも丁寧に。
ものすごく頼りされるんです。だから、自分たちもそれに応えようと、いろんな技術を身につけていくんです。それがもう、めちゃくちゃ楽しくて」
そう聞くと、ボランティア活動が“支援”ではないものに見えてきます。
作業を終えたボランティアたちはたいてい、地元の人に「ありがとうございました」「元気をもらいました」と言って帰っていくのだそう。
もちろん楽しいことばかりではなく、嫌な思いや出来事も経験してきたと言います。
「人っていうのは、押し引きですよね。そのなかで、いかにお互いがちょうどよいところで扉を開けていられるか。これが難しい。開けてみたら何かとんでもないことをされて慌てて閉じる、みたいなこともありますから(笑)。残念な気持ちで心が重くなります。
でも、それでもいいんです。その人には不愉快な態度をとってしまうだけの、何かがあったんだろうなって想像するし、人ってそういうものなんだっていうことで。そのときだけで、一面で判断しないで付き合っていくってことですよね」
という言葉が印象的でした。
“何だかんだ言って人というものが好き”という思いが滲んでいます。
佐多さんは常々、被災地には優秀なボランティア人材が集まってくると感じていました。
でも、交通費をはじめほぼすべてが自前で経済的負担が大きく、続けたくても断念せざるを得ない人も多いのではないか、そこをなんとかできないものかと考えてきました。
「災害時の助け合いについて、『自助、共助、公助』って言いますよね。それに、助ける人を助ける『助助』というのを加えたいです。人を助ける人には、本人も幸せでいてほしいですから」
定年退職後に立ち上げた会社(株式会社PARACOM)では、「ボランティア人材」と「支援物資の物流」という二つの課題のDX化に取り組んでいます。
すでに仕組みはできていて、実用化に向けて奔走中です。
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