『月刊ケアマネジメント』で連載している「幸せのためのヒント」。
11月号では、壊れたおもちゃを修理するボランティア団体「おもちゃの病院ドクターくるりん」のみなさんのことを書かせていただきました。
20年ほど前に神奈川県平塚市で立ち上がり、毎月8回、8つの会場で活動。
現在、メンバーは17人で、そのほとんどが5〜15年続けている後期高齢者。なかには、終戦の数年前に生まれたという80代の人もいます。
5カ所の会場をまわって一人ひとりに話を聴いて思ったのは、
「この人たち、ただものではない!」ということ。
そしてどの会場にも、軽やかで気持ちいい空気が流れていました。
それはきっと、誰も無理していないからなのではないかと思います。
「できない」「教えて」「休む」などと言いやすいゆるさがあるから長く続けられ、結果的にそれぞれが“ハイパフォーマー”になっているような。
実は私も、今年の6月から月イチで、この活動に参加しています。
“なおす”という行為に興味がありアンテナを張っていたところ、近所の掲示板でこの活動について知り、さっそく見学へ。
「〇〇ドクターが担当かな?」「これは入院だよね」とか、
病院で聞くような会話がなされているのがおかしくて、オジさん(年齢的に言えば“おじいちゃん”)たちが、少年のように、楽しげに活動しているのがなんかいいなーと思い、仲間に入れていただいたという流れです。
みなさん、言ってみれば“オタク”。
最近のおもちゃは電池や電子回路で動くものばかりだから、修理するにはそれなりの知識を要します。
「これは重症だね〜」などと言いながら、故障しているおもちゃを取り囲み、経験と知恵を持ち寄って、謎解きをするように原因を探る場面をたびたび目にしました。
知識や経験とともに、部品もストックされていきます。
「いつか使えるかも」と思うと捨てられず、どんどんたまっていくのだとか。
「うちのモンからは『捨てちゃいな』って言われるけど、“お宝”ですよ(笑)。ビス一つとっても、いろんなタイプがあるから」
と教えてくれた人も。
印象深い言葉は、
「エンジニアだった頃はね、物をさわるってことはなかったんですよ。図面を描いても、あとは現場の人がやるから。だから、物をさわる喜びっていうのを、実はあんまり知らなかったんだよね。入社から10年経ったら設計から離れて、管理部門に移って。最後は経営に移っちゃったから。だけど今はね、どこを処置しているか実感できるから楽しい。その実感があるかどうかの差は、すごく大きいんです」
「やることは修理なんだけれども、パッと見てね、どういうふうになおしたら、お金をかけずに、短時間で、きれいに仕上がるか。そんなことを最初に1時間くらい考えたりするんだけど。計画通りに運んだら『やった!』って思うよね。それが、すごい楽しいの。ただなおればいいんじゃなくてね」
「ボランティアゆうてるけど、結局は自分のためかもしれん」
「ハンダを持つ手が震えてきた」とか、「床屋、どこに行ってる?」といった世間話もチラホラ。
ここは、おもちゃをなおすことを理由に顔を合わせて、“井戸端会議”するような場所でもあるのかも。
終了時間になるとさっと片付けて、「お疲れさま!」と言ってさっと散っていく、サッパリしているところも、このボランティアグループらしくていいなーと思います。
0コメント