【幸せのためのヒントFile 7:エディブル・スクールヤードが伝える “食”を学びの真ん中に置くということ】

《月刊ケアマネジメント》(環境新聞社)で連載させていただいている〈幸せのためのヒント〉。

11月号では、「食べること」を学びの中心に置いた教育メソッド、「エディブル・スクールヤード」(“食べられる校庭”)について紹介しています。

お話を伺ったのは、カリフォルニアで始まったこの教育を日本に紹介し普及活動を行う、一般社団法人エディブル・スクールヤード ・ジャパンの代表・堀口博子さんです。


記事全文PDF▶︎▶︎▶︎エディブル・スクールヤードが伝える “食”を学びの真ん中に置くということ


「こんな教育、私も受けたかった」

というのが、エディブル・スクールヤードについて知ったとき真っ先に抱いた感想です。

そして取材して痛感したのは、この教育は、スピードや効率化などによって社会に生じた“歪み”を正す力をもっているということと、「人間は自然の一部なんだ」ということです。


エディブル・スクールヤードは、1995年にアメリカ・カリフォルニア州バークレーで始まりました。


校庭につくった菜園で自然界の生命の循環に触れながら、みんなで食べ物を育て、収穫を祝い、調理していただくという“食べるサイクル”を体験することで、生命(いのち)のつながりを学びます。

注目すべき点は、国語・算数・理科・社会といった必修教科に“食の循環”をリンクさせているところ。

これにより、教室での学びと日々の暮らしがつながり、「生きる力」が育まれます。

根底にあるのは、「エディブル・エデュケーション」。

“「読み・書き・計算」を学ぶ前に「食べること」が最初”→子どもの成長期には、読み書き、計算する能力を身につける前に、何をどう食べるかを教え、身につけることが重要、という考え方です。

日本で初めてこの教育を取り入れた実践校は、東京都多摩市立愛和小学校(2013年スタート)。

その後、継続の危機など数々のピンチを乗り越え、現在では放課後活動を含め、愛和小学校ほか連携校5校(横浜、沖縄、岡山、滋賀など)に広がっています。

不登校でもこの授業には熱心に参加するようになった子、無口だったのにおしゃべりになった子など、子どもたち一人ひとりに変化をもたらしているそうです。

“食べられる菜園”は、子どもたちが息抜きできる“居場所”にもなるのではないでしょうか。

特に印象的だった堀口さんの言葉は、

▶︎子どもたちに、いい失敗をたくさんしてほしいと思っています。野菜がうまく育たなかったり虫が出たり。そのなかで、疑問をもってほしいですね。「地球が変じゃない? 」「この虫は大丈夫だけど、あの虫は野菜の葉っぱを食べちゃう」とか、「なんで? 」を自分たちで考えて答えをみつけてほしい

▶︎人生にはいろんな局面があって、どっちに進もうかと判断に迷うこともあると思います。そんなとき、「おいしい」とか「楽しい」とか、そういった感性が子どもたちの道を拓いてくれたらうれしいですね

▶︎この活動の最高のギフトは、コミュニティが育ち、広がっていくことです。先生と子どもたち、子どもたちと親御さん、親御さんとその友人たちといったように、食を通して人と人との関係が豊かになっていくのを、日々感じています

多忙を極めるなか取材の時間を割いてくださった堀口博子さん、素敵な写真を提供してくださったフォトグラファーの飯田裕子さん、授業を見学させてくださった運営スタッフの皆さんに感謝!