『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)で連載している〈幸せのためのヒント〉。
2023年1月号は、千葉県船橋市にある障害者福祉施設「空と海」の、衣食住にまつわるものづくりについて紹介しています。
お話を伺ったのは二代目の施設長、奥野瑠一さん。
空と海は、“ここ”にいる人(主に知的障害のある利用者さん)が、“ここ”にある素材で、“ここ”でできることをして、無理のない形でものづくりをつづけています。
すべては自然な流れ、ある意味成り行き。
素材は、敷地内にある森で手に入る植物や、近隣の梨農家が持ってきた廃木材、糸の会社から寄付された残り糸、お客さんや地域の人から寄付された着物や洋服など、捨てられる運命にあったもの。
それらが、利用者さんたちの“作為的でない”創作によって、独特なプロダクトなどになります。
手漉き和紙、刺繍を施した布や洋服、手彫りボタンなどの小さいものから器や家具まで多種多様な木工品、説明のつかないアート作品っぽいものなど、バリエーション豊富。
それだけでなく、敷地内にある井戸水を利用してビオトープをつくったり、ひよこから育てたニワトリを平飼いしたりすることで、自然のサイクルの中に自分たちがいることを感じるようにしています。
施設長の瑠一さんは幼い頃、創業者のお父さまに連れられてよく空と海に遊びに来ていて、利用者さんと一緒に過ごしていたそうです。
そんな背景もあり、創業当時から大切にされてきた理念と、「トラディショナルなものもモダンなものも好き」だという瑠一さんのセンスが、いいバランスを保って共存しているように感じました。
「空と海にいるみんなが“生産者”であってほしい」という想いが、すべてを筋の通ったものにしているのだと思います。
▶︎昔は誰もが生産者だったんです。そこにある資源を使って、衣食住に必要なものを自分たちの手から生みだす。空と海もそうありたい。だから、利用者さんも職員も、一人ひとりが生産者であってほしいですね。
と聞いて、胸にストンと落ちるものを感じました。
シンプルに考えることを教えてくれた、瑠一さんをはじめ「空と海」のみなさんに感謝。
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