『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)で連載している〈4つの視点から考える 幸せのためのヒント〉。
4月号では、自然食品店GAIA(ガイア)の清水仁司さんにうかがった話を紹介しています。
25年以上つくり続けている、まかない(まかない弁当)の歴史や物語について。
そこには、清水さんの商売人としての哲学が詰め込まれていました。
それだけでなく、生産者への敬意、食材をいただくことのありがたさ、かないをつくることへの喜びも。
このまかない弁当の存在を知ったのは、GAIAのお茶の水店に買い物に行ったとき。
毎月発行されている“かわら版”で紹介されているのを見てから、ずっと気になっていました。
曲げわっぱの中にびっしり詰め込まれた、野菜たっぷりの色とりどりのおかず。
スタッフだけに向けてつくられたこのお弁当が、高級食材を使ったよそゆきのお弁当より価値あるものに感じられ、「いつか食べてみたい」と思っていたのでした。
そんななか、チャンスが巡ってきました。
GAIAで定期的に開かれている「柿渋マメブクロづくり」に参加したとき、お昼ご飯として出されたのです。
このとき、参加者みんなで床に車座になり、自然と、目の前にあるお弁当に集中し、一品一品の感想を伝え合いながら食べていました。
心が満たされ、心地よさが余韻となって帰宅後も続き、「食べる」という行為の大切さを実感しました。
そこで、このお弁当の背景を詳しく知りたくなり、取材依頼をしたという流れです。
清水さんが発する言葉はどれも“直球”のように、心の真ん中にストンと入ってくるようなものばかりでした。
なかでも印象的だったのは、
▶︎“高級スーパー”みたいに、利益優先の合理的な会社にすることもできる。でも、 GAIAにはずっと、根っこに「農家とともにあろう」みたいなマインドがあるんだよね。農業だけじゃなくて、漁業や林業、第一次産業に非常に魅力を感じていて。第一次産業の人たちが恵まれない社会には、なってほしくないと思ってるよね。
▶︎にっちもさっちも行かないわけ。でも、ポジティブに店をやってるわけ、自分たちがいいものだと思って売ってる食材に囲まれて。外食なんかできなかったけどさ、楽しく働いてたんだよね。
▶︎俺が店に立つときは、食べ物を腐らすとか捨てたことはないね。ほぼ全部食べてきたね。それでまかないをやってきた。売っているものの味を知らなければ売ることはできない。食べて「うまい」と思うものを売ろうと。で、おいしくなかったらおいしくないって言おうと。そうやって差損(損失)をなくしていこうと。
▶︎嘘をつかないっていうのがテーマだから。その安心感はあるのかもしれないね、お客さんは。
▶︎血が薄まったら、店はダメになる。
今回の記事ではふれていませんが、清水さんがずっと掲げてきたGAIAのコンセプトは「モア・ベターショップ」。
“モア・ベター”という言葉に新しさはないですが、改めて考えてみると、気持ちがいい言葉だと思いました。
人それぞれに基準が委ねられ、それぞれの度合いの“モア・ベター”があってよくて、押し付けがましくないです。
自分なりに「こうしたら、もっとよくなるかも」と工夫し続けること、それを楽しみながら暮らしをつくることが大事なんだなと。
清水さんは2020年、お子さんを伸び伸び育てる環境を求めて、家族で高知県に移住しました。
それを機に社長職を若手に譲って副社長に。
現在は高知・東京・GAIAの倉庫がある伊勢原(神奈川)の三拠点生活を送っています。
多忙ななか、時間をつくってくださった清水さんに感謝。
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