《月刊ケアマネジメント》(環境新聞社)で連載している〈幸せのためのヒント〉。
4月号では、クオリティの高い国産ワインを製造していることで知られる、「ココ・ファーム・ワイナリー」(栃木県足利市)と、それを支える指定障害者支援施設「こころみ学園」の園生たちの仕事と暮らしについて紹介しています。
私がココ・ファームのことを知ったのは10年ほど前。
たまたま入った飲食店で、店主にココ・ファームの「農民ロッソ」をすすめられ、それまでもっていた“国産ワインはコクがなくておいしくない”というイメージを覆されました。
そのワイナリーを支えているのが障害のある人たちだということや、こころみ学園の創設者、故・川田昇氏の情熱と信念について知ったのは、しばらく経ってからのことです。
そして昨年、ソーシャルファームセミナーで、川田氏のお孫さん、池上峻さんの講演を聴き、取材を依頼させていただいたという経緯です。
私のように、ワインを入り口に「こころみ学園」のことを知り、園生も含めてのファンになる人はたくさんいます。
年に1度の「収穫祭」の賑わいが、それを証明しています。
2019年には、2日間で延べ1万5,000人がワイナリーに集ったそうです。
ココ・ファームとこころみ学園の関係はというと。。。
こころみ学園の園生たちが育てたブドウをココ・ファームで買取り、ワインを製造。
ココ・ファームが、ワイナリーでの仕事をこころみ学園に業務委託。
ブドウ栽培もワイナリーでの作業も一つひとつは簡単ですが、同じ作業を飽きずに、ミスせず続けるのは容易ではありません。
そこで戦力となるのが、“繰り返す”作業を得意とする、知的障害者や自閉症の園生たち。
ルーティンワークをする姿はまるで職人、こだわりの強さは“プロ意識の高さ”と言い換えることもできます。
【哀れみの1本ではなく、最高の1本をつくる】という、川田氏と醸造家のブルース・ガットラヴ氏(川田氏がカリフォルニアから招へい)が交わした約束。
“ほどほどの貧しさ”を大切にした暮らし。
こころみ学園を訪れ、“ミニマル”であることがもたらす“豊かさ”を痛感しました。
今回お話を伺った池上峻さんは、
【川田はよく、4つの我慢が大事だと話していました。“暑い我慢“”寒い我慢” “お腹が空いた我慢” “眠い我慢”。それらを耐えた後に、必ず幸せが待っていると。暑さを我慢した後に飲んだ麦茶がとっても美味しく感じるとか、寒さを我慢した後に凍えた体で寮のお風呂に入ったら、体の芯からじんわり温まって生き返るようだとか】
と、教えてくれました。
ワイナリーとこころみ学園には、心を動かされる物語がたくさん詰まっています。
池上さんは、「川田に幼少期から世話になってきたし、そのくらいは働いて返そう」という思いから、こころみ学園に入職。馴染めなければ辞めちゃえばいいかくらいの気持ちだったのが、「居心地がよすぎて、気づいたら居着いちゃって」とのこと。
学園には職員寮があり、“入職から1年間は住み込み”というのが当時の習わし。
池上さんは1年どころか、結婚するまでの7年間、住み込みを続けながら園生と生活と仕事をともにし、その数年後にココ・ファームに移籍。ブドウ栽培・醸造・販売の経験を少しずつ積みながら、現在は取締役として経営補佐に軸足を置き、こころみ学園とココ・ファームをつないでいます。
そんな池上さんの園生への信頼はとても厚く、
【何でも笑ってポジティブに受け入れるということを、園生から学びました。園生の自慢話はいっぱいできますよ】
と話していたことがとても印象に残っています。
お忙しい中、ワイナリーとこころみ学園を丁寧に案内してくださった池上さんに感謝。
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