【幸せのためのヒントFile50:対話の土壌をかもすということ~女性の労働問題に半世紀かかわってきた 伊藤みどりさんのはなし②~】


『月刊ケアマネジメント』で連載している〈幸せのためのヒント〉。

8月号では7月号につづき、女性の労働問題に半世紀かかわってきた「一般社団法人はたらく女性の全国センター(ACW2)」代表理事、伊藤みどりさんに伺ったお話を紹介しています。


「新しい会員が入ってくると揉めたりして、組織がかき混ぜられるんです。その繰り返し。でもね、最近、やっと落ち着いてきたかな。やっと対話の土壌がかもされてきたかなって思います」

と、伊藤さん。

そこに至るまでの道のりについて聞いてみました。



仕切ったり仕切られたりせずに

合意をつくりだすにはどうしたらいいか

2016年、はじめて伊藤さんに取材したとき、ACW2で発行・販売している『対話の土壌をか・も・す ワークブック』をいただきました。

米国やアジアで実践されているワークショップを団体のメンバーで体験、研究。

そこから自分たちに必要なものを選び、試行錯誤を経てまとめた渾身のワークブック。

非常によくできています。


その背景には、同じ想いをもって集まったはずの女性たちの間に生じていた分断があります。

ACW2発足から2年ほど経った2009年の定期総会のとき、“がんばれば報われた「団塊の世代」”と、“はたらいてもはたらいても生活が楽にならない「就職氷河期世代」”との間で、激しい対立が起こったのでした。


それがきっかけとなり、そもそも「はたらく」とは何か、原点に戻ってみんなで考えることに。

約1年、会員同士で対話を重ねた末、団体の基盤となる長期ビジョン「100年ビジョン」をつくり上げました。



印象に残った伊藤さんの言葉


「世の中は複雑なんだから、綺麗に整理しなくていい。複雑なことは複雑に考えたほうがいい」


「なぜACW2にたどり着いたかっていうことを一人ひとりに話してもらったら、すっごく面白かったの。『私はこの時代はああして、そのあとこうして、ACW2にやって来た』っていう、個人史みたいな話を共有したんです。恵まれた人生もあれば苦労してきた人生もあって、価値観が違う人たちがここに集まって来ている。でもね、それぞれ違う道を歩んでいても、共通項がだんだん見えてきて、『この仲間で何かできそう』って思えてくるの」


「20代、30代で社会活動をしている人たちは、みんな力をもってますよ。やり方が正しいとか間違っているとか、そういうことは問題じゃないの。とにかく自分の力で生きようとしているところが素晴らしい。忖度しないで自己主張できて。“出る釘”のような人って、叩かれるんですよ。だから、そういう人たちが潰されないように守っていかないと。『あなたには力があるんだから、諦めないで』『私はあなたを信じてるよ』って伝えたり、ただ話を聴いてあげたりしながら」